"くすりや"まめ太の処方箋

地方の病院で"くすりや"やってます

【カシリビマブ】ロナプリーブ/抗体カクテル療法を混ぜてみた【イムデビマブ】

「酸素ステーションをつくったどぉ!」「野戦病院つくるンゴ!」なんて飛び交う昨今ですね。

 


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さて、ガースーも会見していた抗体カクテル療法、商品名ロナプリーブをまめ太も先日調製いたしましたので備忘録を書こうと思います。なお、このブログの読者様はいったいどういう属性の方々かはよくわからないのですが、投げ☆して下さる方は非医療従事者が多いので一般ピーポー向けに書きます。


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まず、ロナプリーブとは「カシリビマブ」と「イムデビマブ」という2種類の抗体医薬品を混ぜて一緒に点滴する薬です。1回点滴したらおしまいです。抗体医薬品とはなんぞや?と思われる方、解説サイト貼っておきます。

 

https://www.chugai-pharm.co.jp/ptn/bio/antibody/antibodyp09.html

 

ノーベル賞で有名になったがんに効くオプジーボ(ニボルマブ)や、リウマチに効く自己注射もできるアクテムラ(トシリズマブ)など「~マブ」とつくものは抗体医薬品です。近年はかなり種類が増えています。

 

ロナプリーブの仕組みはめっっっっちゃくちゃ雑にいうとウイルスのトゲに抗体がくっついて、ウイルスのはたらきを弱めるしくみです。「ヨシ、ガースーもオヌヌメしてるし、コロナになったら自分も投与してもらおう!」と思ってる方。これは誰でも投与してもらえるわけではありません。条件があります。もう書くのが面倒なので製薬会社の画像貼っときますw

 


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ようするに酸素投与をするに至ってない(軽症)、リスク高そうな人にしか使えません。

 

そして厄介なことにこの薬、バイアル1本につき2回分入ってます。そして開封後は48時間は冷蔵庫で保管可、それ以降は廃棄ということになってます。つまり‥

 

カシリビマブのバイアルから5mLとイムデビマブのバイアルから5mL吸いとって、生食(今回は100mL)に加えて払い出し。瓶の残りは冷蔵庫でとっておくってことです。

 

※ということで沼の底病院では薬剤部でくすりやが調製しています。ただ、施設によって様々らしく、看護師が病棟で調製して残りは速やかに薬剤部に返却‥という病院もあります。

 

沼の底病院でも急遽導入することになり急いでマニュアルを作成し運用が始まりました。その中には「当直時間帯は調製はしない。‥‥あっ‥でもそれはケースバイケースでやっちゃってもいいよ☆」

 

‥‥( ^∀^)

 

当直者に責任丸投げwww


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導入してからは交代で調製していました。「まめ太もやってみるか~」と声は掛けられていたのですが、「ワタシがやりたいんですぅ~」とシャシャリでてきた後輩が調製したりしてたのでやったことはありませんでした。

 

そして某日当直中、

プルプルプル‥

まめ太;「しもしもー、くすりやのまめ太です」


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当直内科医;「今夜当直の○○です。いま、緊急入院されてきた患者さんが状態悪いのでロナプリーブを今からいきたいんですが、端数の1回分が冷蔵庫にありますよね?

 

冷蔵庫には1回分あります。ただ、

まめ太、調製したことねーよw


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まめ太;「‥ワタシはしがない当直くすりやです。上の者に相談するので一旦折り返します」

 

内科との申し合わせでは当直中は調製しないとなっているみたいなので断ることも可能ですが、ここで断って患者さんが容態が悪化してしまうと罪深い、、、、


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というわけで担当の主任に電話して相談をしました。

 

まめ太;「やっ‥夜分にすみません、当直のまめ太ですが‥」

 

‥‥結局、「ここは人命ファーストっすね!」となぜかまめ太が発言しておりw、主任に電話して指示してもらいながら調製することになりますた(^q^)w(※「いまから病院に行こうか?」とも言われましたがそんなことで呼び出すのも申し訳なかったので)


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まめ太;「内科当直の○○先生、ここは人命ファーストで当直中ですが調製させていただきマッス!」


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当直内科医;「では今から患者の同意書とりますね!」

 

 

というわけで一回もやったことない奴が夜中に調製することになりますた(^q^)


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事前準備としてクリーンベンチのスイッチを入れてアルコール消毒(これはLaboで細胞培養で行っているので手慣れたものです)、冷蔵庫から(1回使った残りを)取り出し20分室温放置、そして主任に電話w(^q^)

まずカシリビマブを5mL、次にイムデビマブを5mLを10mLシリンジ(注射器)に抜き取りました。陰圧はほとんどかかってなかったので空気は3.8mLくらいにしておきました(※後で解説します)。そして生食100mLのボトルに加薬。まぁまぁネバ~としていますね。イメージとしたらアイスコーヒーにガムシロップを入れたときのモヤ~みたいな感じです。10回転倒混和。そして「できたッス!」と病棟に電話すると看護師さんが取りにこられました。


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一般ピーポー向けにめっっちゃくちゃ雑に解説すると、バイアルって陰圧操作しないといけないんですよ。要するに、バイアルの中の圧力を下げるすなわち刺したシリンジは引っ張る操作をします。わかりやすく言うと逆の陽圧を思い浮かべるといいですね。シリンジ刺して、バイアルに向かってプランジャー(注射器押す)を押すと中身が圧力がかかって最悪の場合吹きこぼれます。なのでバイアル操作は常に陰圧操作をしなければいけません。なので抗がん剤にしろ何にしろくすりやは「陰圧操作」を口酸っぱく叩き込まれます。ただこれ、看護師さんは逆に陽圧にして注射薬の調製をされることが多いんですよ。いや、教科書的にはもちろん陰圧にしないといけないんですが。なぜかというと陽圧にしたほうが調製のスピードアップができる。圧力をかけた反動で速く調製できます。そのかわり周囲に結構飛び散りますが、まぁ害のない薬品ならいいんでしょうか‥‥


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そして10回転倒混和なんですが、この抗体医薬品(ロナプリーブに限らず)泡立ちやすいですが、泡立ててはいけないんですよ(品質に影響?)。だからバイアルから抜き取るとき、生食に加薬するときちょっと注意しなければいけません(コツがあるんですが、割愛)。あと、できあがった薬を振り回すのもアウトw


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とまぁ、まめ太の調製備忘録でした。

 

最後に「じゃあどんどんロナプリーブ使っちゃえば人類はSU・KU・WA・RE・RU☆」と思われた方。そうでもないですね。まず、冒頭に挙げた要件を満たす方しか使えません。つまり、呼吸器をつける状態までいってしまうと適応から外れてしまいます。あとは医療費の問題。抗体医薬品ってめっちゃくちゃ高いです。たぶんしばらくしたらコロナ大増税とかあるかもね。そして、副作用の問題。抗体医薬品はインヒュージョンリアクションという過敏反応(でもアレルギー反応ではない。ヤヤコシヤーw)が起こりやすいです。教科書的には「抗体医薬品といえはインヒュージョンリアクション!」とパブロフの犬並みにテストに出そうなやつです。発熱、悪寒、アナフィラキシー様症状とかが投与後~24時間以内に起きます。一部の抗体医薬品(リツキシマブとか)は抗ヒスタミン剤とかをあらかじめ投与しておくこともあります。なのでこれらの医薬品は「ゆっくり投与する」ことが対策となっています。ロナプリーブはインヒュージョンリアクションの発生率は0.2%なんですけど、どうなんですかね?特に何も対策の薬品とかは出てませんでした。ポンコツのまめ太にはよくわかりませんが‥

 

あと、1バイアルに2人分入っていますが、過量充填されていて結構な量が2回分採取しても余ります。「野戦病院つくるンゴ!」と言ってる地域がチラホラあるようですが、


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投与患者を集約するとバイアルの余りをかき集めて投与する‥なんてのが起こりそうですが、やっちゃってイイんッスかね??絶対やる奴出てくるとまめ太は予想。


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今回は珍しくかなりまともな記事を書いたつもりです。それゆえ投稿に少々時間がかかってしまいましたが‥たまにはくすりやらしいまともな記事も書きます。最近時間的な余裕がなくなかなか記事をマメにかけませんが、全人類のひまつぶしになるような記事を今後も書き続けますのでよろしくお願いします!

 

 

**おまけ**

調製後記念撮影w(オバケさんはお察し下さい)


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添付文書も入ってました(英語)
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てか、なげぇよ!!w(1mくらいある)
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今日も読んでいただきありがとうございます。またのご訪問お待ちしています!