"くすりや"まめ太の処方箋

地方の病院で"くすりや"やってます

【左右のメガネが】高齢者は集団自決騒動とくすりや【異なるアノ方】

左右のメガネが異なるアノ方の発言が大炎上しているみたいですね。

https://www.businessinsider.jp/post-265973

まめ太はメガネが気になってショーがないので炎上はよくわかりませんが、「高齢者」に関することで最近複雑に思うCaseがあったので記事にします。

【Case1】80代後半男性。某がんのため抗がん剤治療中のため入院

抗がん剤は刹細胞でも免疫チェックポイント阻害薬でもそれなりに副作用が付き物のため相応の覚悟が必要です。刹細胞だと薬剤によって脱毛、しびれ‥免疫チェックポイント阻害薬はirAE(間質性肺炎1型糖尿病、胆管炎、腸炎‥‥etc)が起こる可能性があり、実際にirAEで入院された患者さんも何人も見てきましたし、亡くなった患者さんもいます。亡くなった患者さんは最後は(クリームルームに入れた)立ち入り不可になってしまいベッドサイドに訪問することはできませんでしたが、カルテに「がんそのものじゃなくて抗がん剤の副作用で死んでしまうなんて、、」と家族の発言が記載されており、なんとも複雑な気持ちになりました。80代後半はもし延命できたとしても平均寿命を考えると残された時間が限られています。残された時間を少しでも伸ばすのか、それとも副作用がありつつ生きるのか。そして医療費を考えてもオプジーボなどの免疫チェックポイント阻害薬は大変高額です。「命とお金どっちが大事なんだ!」と炎上しそうですが、果たしてその高額な税金を投入するに値するのか‥

そもそもこの患者さんは本人の意思で「副作用があっても少しでも延命がしたいから抗がん剤を受けたい」と決めたのならまだしも、もし周囲の家族の意向であったなら、、残された時間を副作用に苦しむのは本人です。もちろんその真意は不明ですが、、、

 

【Case2】食道がんで胃ろう造設の70代男性

「いままでな~んにもビョーキしたことなかったのに、飲み込みにくくてビョーイン行ったら「食道がんがもう気管にまで浸潤してる」ってよ、オッタマゲー」

"飲めなくなった"オジーサン、胃ろう造ってから抗がん剤の説明をしに行ったら、「なんか胃ろう造れ造れ言われたから造ったけど‥こんなの家帰ってからも管理もできない(ヨメはまるでダメ)し、口から食べられないなんて、、こんなことになると思ってなくて入院するときに水筒持ってきたんだけど、もう水筒も使うことないよ‥」

―飲み込めなくて栄養がとれないなら胃ろうを造れば栄養が摂れるじゃない。

たしかに栄養は摂れるかもしれません。でも、本人も含めて"誰も望んでない"胃ろうを造ったところで誰が幸せになるんでしょうか‥‥

【Case3】50代、ダウン症患者の抗がん剤治療。

ダウン症だがもう両親は高齢で80歳近く、兄弟も全員遠方に在住のため施設に入所。ある日がんが見つかったので抗がん剤治療をすることに。しかし、(本来は当院は面会禁止だが)ダウン症患者で本人は3歳程度の知能のため介助が必要なため母親に付き添い許可。 

少なくとも、本人は意志疎通がはかれないので抗がん剤治療を受けたいという意思は持っておらず。両親の希望なのでしょう。このCaseはかなりきわどい話で下手すると障がい者排除の炎上の危険がありますが、付き添いしている母親はもう80歳近くで本人の健康問題もあるでしょう。「本人は望んでなくても」放置することも倫理上問題があるのでしょう‥しかし、本人の意思がない、高齢の親もいつまでも付き添えないし、他の兄弟はノータッチ‥どうしたもんでしょうか‥

 

一時期「人生会議」と言って小籔さんのsensitiveなポスターが炎上したことがありました。

私が病棟を担当した数ヶ月でさえ「本人も含めて誰も望んでないんじゃないか、誰も幸せになってないんじゃないか‥‥」といった医療事例を見ました。沼の底病院のまめ太担当の病棟のDr.は(内科担当ということもあってか??)比較的あらかじめ予後が悪そうな患者さんは本人や家族に「急変時DNR(延命治療なし)」を確認していることが多いですし、末期がんの患者さんの家族には最期に「いたずらに延命することは本人に苦痛を与えます」と説明しているようですが。

 

 

医療者側は積極的に死に直結することに誘導をすることは殺人罪に値します。しかし、行う医療行為が「本当に望んでいるのか、それで幸せなのか」どこまでも答えのない問題なのかもしれません。

 


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↑有名な画像ですね