"くすりや"まめ太の処方箋

地方の病院で"くすりや"やってます

【ガッシャーン】くすりを割ったらどうなるの?【失礼しましたー】

某日、研修医が、

 

「すっ…すみません…エフェドリンのアンプルを割ってしまいました…」とやってきました。



 

まめ太;「んじゃ、"破損届" 書いて持ってきてください~」

 

と用紙を渡し、再び(記入した用紙を持って)研修医がやってきたのですが、

 

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研修医;「こっ…これってボクの給料から天引きされる感じですか…?」

 


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まめ太;「そんなわけないですよー!(;^ω^)」


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薬品を破損したり、事情により失われたときというのは届け出を沼の底病院では書くことになっています。これは始末書というわけではなく、薬品というのは病院の資材の一部なので資材の管理を病院サイドとして把握する必要があります。ですので届け出は1枚は事務方へ、そしてもう1枚は薬剤部に提出してもらいます。「事務が資材として把握するのはわかったけど、なぜくすりやにも提出するの?」と思われるかもしれませんが、これは薬品の在庫管理、院内での所在を薬剤部は把握する必要があるからです。

 

 

「くすりが失われる」には様々なパターンがあり、破損、期限切れ、中止、滅失…などが挙げられます。破損は注射薬のアンプルを割ってしまった(正直これがほとんどを占めてる)、内服を落下させて汚染して使えなくなった、散薬をこぼして必要量が飲めなくなった…です。

期限切れですがこれは特にくすりや特有で、病院には「ほっとんど使わないけど在庫を持っておかないといけない」薬がわりとあります(特に注射薬はレアもの多い)。卸さんに期限切れまでに買い取ってもらうこともなきにしもあらずですが、そんな薬は大抵需要がないのでそのまま廃棄してます。この使用期限の管理は地味ながら重要な仕事の1つで、もし使用期限切れの薬品を患者さんに投与してしまうとインシデントになります。また、長くなるので詳細はいつか記事にしますが、各外来や病棟、検査室等に置いてある薬品も半年に1度、くすりやが点検に回り期限をチェックし、期限が近くなっているものは交換しています。

 

中止というのは看護師や医師にたまにあります。点滴を加薬したけど容態が変わり使用しなかった、医師の中止の指示が遅かったので加薬してしまってたなどですね(これは看護師さんがときどき激おこになってますw)。これ、安い薬ならいいんですが、ケモ薬の場合はとーーーーーーんでもないことにないことますwというのもケモ薬は高額商品が多いです。過去に、ノーベル賞で有名になったオプジーボを「中止の指示出すの忘れてた、テヘペロ」な医者がいて、「こんな高額商品、どうなるのかわかってんのかよ!!」となったのですが(薬価41万580円)オプジーボは投与量が一律なことと、使用可能時間(調製してからの安定性の問題から使用時間が決まっている)ギッリギリに外来ケモ患者さんが来てなんとか廃棄を逃れたことがありました。気をつけましょう。


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あとは滅失ですが、ようするに行方不明とか誤投与ってヤツです。これはやばたにえんなのでこれ以上はご想像におまかせですねw

 


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少年漫画で「バイトしてるラーメン屋のどんぶり割って、弁償のために給料ナシじゃ~」というありがちな描写がありますが、病院では別に個人の責任は問われません。なので給料から破損した分の天引きなんてのはありませんのでご安心あれ。まぁ、研修医が割ったエフェドリン薬価94円みたいですがw

 

 

この破損届は冒頭に書いた通り「病院資材の把握(事務)と薬品の在庫・所在管理(薬剤部)」が目的です。しかし、一部看護師さん達には「始末書」と思われているようでけーーっこう書くことを渋られたりします。というのもこの書類、「所属長の署名・捺印」が必要なんですよね。師長なり看護部長なりにハンコもらうってのもまぁ煩わしいのかもですね。「印鑑レス社会なんだからなくせよ!」と思いますが、これは「不正使用・横領の防止」の意味もあります。たまーにドラマなんかで「トイレの陰でこっそりセルシンを自分に打って…」なんて出てきますが、こういう横領を防止するためにも上司の承認が必要なんでしょう。今はもうペーパーレス社会なので紙での運用はいずれ消えていけばいいんじゃないかと思いますが、オンライン上での届け出になったとしても所属長決裁が必要…というしくみにする必要はあるかなと思います。


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この破損届、実は沼の底病院のくすりやは(個人では)あまり書いたことがありません。というのも、調剤中に破損することはかなり多く、さらに期限切れの薬も毎月結構あります。なので沼の底病院薬剤部では薬局長の名義で1ヶ月分まとめて届け出をしています。破損分の薬品の薬価計算書も一緒に提出しているのですが、以前期限切れ薬品が超絶高額になったとき(100万円超えw)さすがにこれはまずいだろうということになり、数か月に分割して記載という工作をしましたがw(モノはちゃんと期限内に廃棄しています)。

ただ、特別な場合、くすりやでも個別に届け出を書いています。実はまめ太、「破損届を個人的に書くことになってしまった」トホホな出来事がありました。今日は長くなったのでこれはまた後日記事にします。

 

今日も読んでいただきありがとうございます。またのご訪問お待ちしています!