"くすりや"まめ太の処方箋

地方の病院で"くすりや"やってます

医療と医学

医療と医学。これらは混同されがちですが、隔たりがあると思っています。

 

医療…EBM(根拠に基づく医療)やらなんやら言われているけど、「科学的には理由がわかってないけど、なんか実践してる」ことが臨床の現場ではあるある。そういうのを人は「経験」と呼ぶ。実社会で運用していくものなので書類仕事や事務的なものが多い。そして多くは行うのに国家資格が必要。

大病院のイラスト

医学…自然科学という学問。根拠が説明できなければいけない。行うのに資格は不要。

実験室のイラスト(背景素材)

 

働き出してからこの2つの隔たりを感じました。いや、働いてみないとわからなかった。薬理学やらなんやらは大学卒業してすぐのほうがよくわかっていたでしょう。けれど、実際の仕事は内規と呼ばれるルールをひたすら覚えて仕事したり、患者対応とか。びっくりするくらい科学知識って実際の業務にはいらなかったです。そして人って使わないと忘れていくんですよ。そして不思議なことに、学生時代に(さぼりの私と違い)あんなに熱心に研究していた人たちが、慌ただしく仕事に悩殺されていると、すっかり研究とか科学とかを忘れてしまっているような。 

 

kusuriya-mameta.hatenablog.com

 

前回の記事で医師、歯科医師、薬剤師以外の医療専門職は大学に行かなくても就けると書きましたが、医療を行うための知識は大学に行かなくても学べるでしょう(実際に問題なく病院は回ってるし)。ただ、学問として医学が学べるかは別です。

(薬学も自然科学として広義の医学に含めるとすると)薬学部は4年制時代は医学に偏っていましたが、6年制では医療を盛り込んできています。特に雨後の筍のようにニョキニョキできた大学では医療に重点を置いていたり、そうでない旧設大学でも近年はそういうのが多いですが、臨床に出たら医療は否が応でも巻き込まれるので学生のうちは医学を大いに学ばないと、あとで学ぶのはなかなかに難しい。。

 

また、医療は「資格」が絡むので職やお金にはそこまで困らない、しかし医学を研究してもお金にならないことが多い。薬学部の大学教員も(実務家教員は別として)薬剤師でない人も多く(理学部化学科卒の有機化学の先生とかいたよね)、さらに医学部の基礎の教室の教員ともなると教授以外ほぼ医者じゃない。理学部、農学部…そもそも医療関係の資格を持っていない。でもいいんです、医学は自然科学だからむしろそういう人たちのほうが研究ができます。

10年以上前に「博士が100人いる村」というのが流行りました(ネットで検索したら普通に読めます)。科学者は一部のラッキーな人を除いて「食べていけない」(大手製薬企業の研究職や、大学や研究所の正規のポストに就けた人はラッキーです)。新型コロナで医療従事者の現状やワクチンやら特効薬やらの研究・開発が取りざたされているけど、研究している人達の中にはいろんな状況の人たちがいるだろうなと思うと、待遇も含めてやっぱり隔たりを感じた今日この頃なのでした。

 

結論;病院で働いている人間に医学的なことを聞いてもわかっているとは限らない。

医療と医学、両方を体得している人は…すご。

 

※以前、コロナの煽りでlifeworkの研究を一旦中止したと書きましたが、もう通常運転しております。ときどき研究のことも書いていけたらなと思います。

 

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